野菜の花と京都長尾ファームの端境期
2月~3月になると、野菜農家の私が心配することがあります。
それは、多くの野菜で花が咲くことです。カブ、大根、ニンジン、小松菜、水菜、ネギ、ほうれん草など、京都長尾ファームで冬季に栽培しているほとんどの野菜の花が咲き始めます。なお、花が咲くことは、トウ立ちとか抽苔とか言います。
農家にとっては、「花が咲いて綺麗だなー」という感情はこれっぽっちもありません。というのも、花が咲くと、野菜としての品質は下がります。つまり、全く売り物にはなりません。花が咲くと、野菜が硬くなったり、筋っぽくなったりと良いことはあまりありません。
一方でその花を食べることもできます。実は、カブ、ハクサイ、小松菜の花はとっても美味しいです、同じ花でも野菜の種類によって味・食感は少し異なります。通の人は、その違いを楽しめるかもしれません。が、如何せん、花ばかり食べると飽きてしまいます。
この、花が咲くことは植物の生理現象です。子孫(種)を残すために生殖成長が始まった証です。トウ立ちが始まる条件というのがあります。野菜によって条件が異なります。条件は、大きく分けて
・日長(日の長さ、短日・長日)
・温度(低温・高温)
-種(芽の出始め)の段階から低温を感じるもの
-ある程度大きくなって低温を感じるもの
これらが野菜によって違うのでとっても複雑です。
例えば、大根は種の段階で低温を感じ花芽ができます。ほうれん草は長日(日が長くなったこと)を感じ花芽ができます。
野菜によってトウ立ちが始まる条件が異なるので、ここが農家にとって難しい部分でもあり、技術・知識が必要な点です。種をまく時期を間違えると、春先に想定より早くトウ立ちが始まり、収穫ができないという事態も考えられます。それは、年によっても気温は異なりますし、同じ市内でも平野部と山間部では気温に差があります。ですので一律に〇月〇日に種を播けば大丈夫、と言えないからです。農家の経験や地域の情報が大切になってきます。
ちなみに、今年の私は見事にハクサイの花を咲かせました。まだまだ未熟者ですね…
花芽の見えた大失敗のミニ白菜はこちらです。12月種まきでハウスなら2月収穫でイケると聞いたのですがダメでしたねー。 pic.twitter.com/Ll1XG9Q7Qn
— 長尾政則/京都長尾ファーム (@masanorinagao) March 2, 2020
トウ立ちを避ける技術として
・トウ立ちしにくい品種を利用する
・むやみにはやまき・遅まきをしない
・ビニールハウスやトンネル資材を利用して低温にさらさない
など工夫する必要があります。
また、トウ立ちは別の呼び方で春化、英語ではvernalization(バーナリゼーション)と言います。vernalは”春”、”青春”の意味があります。つまり”トウ立ち”とは、春が始まった証拠とも言えます。自然の摂理ですので致し方ないのですが、農家にとっては戦々恐々です。その年の気候によって、花ができる時期がズレますので、注意しながら花が咲いていないかチェックします。
『端境期』という言葉を聞かれたことはあるでしょうか。ちょうど3月から4月ごろにかけてが野菜の端境期と言われています。トウ立ちや収穫できる野菜が極端に減るので、野菜が品薄になります。スーパーには、気候に幅がある全国から野菜が集まるのであまり実感がないかもしれませんが、地方の直売所にいくと野菜の種類が少なくなっていることを確認できると思います。
京都長尾ファームの野菜セットも、この期間は発送を休止させていただいております。GWを過ぎたころから春の野菜がたくさん収穫できますので、しばらくの間楽しみにお待ちください。春の陽気の中で育った野菜は美味しいですよ。
昨年の6月ごろの野菜セットの写真です。
お世話になります。
京都市内での販売 、ネット販売はどちらでされていますか?
コメントありがとうございます。京都市内ですと西京区の産直ひろばhttp://sanchokuhiroba.com/に出荷しています。何卒よろしくお願い申し上げます。