農家の品種選び‐京都長尾ファームが品種を選ぶときに考えていること
冬は、気温が低いので畑の野菜はゆっくり成長します。露地野菜中心の京都長尾ファームは一年のうちで最も時間に余裕があります。ですので、畑に出るのではなく、室内でできる事務仕事も多くなります。寒風吹きすさぶ畑の作業をできるだけ避けたいという忍耐強くないという事情もありますが。経理、栽培の勉強、ウェブサイトのメンテナンスなど冬の間に行っています。そんな事務仕事の一つに今年作る野菜の種・品種を選ぶことがあります。
種は自分で採るという農家の方もおられますが、京都長尾ファームでは購入した種子を使っています。購入種子を利用する主な理由としては、
・ 様々な品種特性を持った種子を使いたい
・ 採種・管理する手間を省きたい
つまり種子をその専門家(種苗会社)に外注しているということになります。
京都長尾ファームでは、いろいろな種苗会社のカタログを眺めながら、想像を膨らまし、「今年はどんな野菜を作ろうか」を考えます。
まず、カタログを取り寄せます。手元にあるカタログだけで、タキイ種苗、サカタのタネ、丸種、ナント種苗などなどたくさんあります。京都の会社であるタキイ種苗や丸種の種子を使うことが多いですね。
種苗会社によって取り扱っている品種が違うのでカタログを眺めるだけでも楽しいですし、ユニークな品種を開発している種苗会社もあります。実際利用するのは、農家仲間から得た情報などを基に自分の栽培方針に合った品種を選んでいます。
次に品種を選びます。京都長尾ファームでは野菜の宅配(オンラインショップやふるさと納税の返礼)と近くの直売所(「産直ひろば」や「たわわ朝霧」)を中心に出荷しています。基本的にはお客様になじみのある定番品種を中心に栽培します。食べたことない・使い方の分からない野菜ばかりだど困りますよね。ただ、せっかく農家から直接買っていただくお客様に目新しさも楽しんでいただけるようスーパーマーケットではそんなに売っていない野菜も栽培するようにしています。ちなみに、去年作った紫色のブロッコリーは収穫時は紫で珍しいと思いましたが、茹でたら緑色になったので、それって紫の意味ある?という感じがしました。そういった変わった品種もいろいろ試しています。
さて、品種を選ぶ基準は美味しさも重視しますがそれだけではありません。以下のようなポイントを考えて選びます。
・美味しさ 甘味、酸味、苦味、旨味や柔らかさなど美味しさの要因となる形質は品種によって違います。これは、作ってみて食べてみたり、農家仲間の評価を聞きながら毎年、ブラッシュアップしていく必要があると考えています。ただ、美味しさとは単純なものではなく、過去の経験など個人の主観に委ねられる部分もあると思います。
・早晩性 収穫できるまでの期間です。早生(わせ)~晩生(おくて)まであります。宅配の野菜セットを通年で販売したり、直売所でほかの生産者と被らない季節に収穫できるように、品種で収穫期をリレーして、幅広い期間にわたり収穫できるように工夫します。
・病気の抵抗性 特定の病気に強い品種があります。野菜の種類によっては特定の病気にかかりやすいものがあります。例えばアブラナ科の野菜を暖かい季節に栽培すると根こぶ病という病気にかかることがあります。根にこぶができて給水に影響が出ますので困る病気です。野菜によっては根こぶ病に抵抗性のある品種がありますので、それを用いたりもします、そうすることにより使用する農薬を減らすこともできます。
また、今年は野菜の定期便を購入いただいている友人のお子さんの要望でトウモロコシを作る予定です。去年、送ったトウモロコシがとっても好評だったそうで、年末に会った時にお子さんから直接お願いされました。
ということで、早晩性など考えて栽培計画を立てて、できるだけ長くお届けできるように品種選びを考えています。
・早生品種を3月の上旬からビニールハウスで栽培します。
・中晩生品種を露地で栽培します。5月ごろに播種、収穫は7~8月ころです。この栽培が気候的には一番栽培しやすいのですが、美味しいトウモロコシは、虫にとっても美味しいのです。アワノメイガという蛾の幼虫が良く食べるのでその対策を考えないといけないです。
・中晩生品種の抑制栽培。7月に播種。収穫は10月の後半ころ。実は、涼しくなってから収穫するトウモロコシは甘くておいしいです。
このようにしてお客様の笑顔を想像して栽培計画を立てるのはとっても楽しいです。また、お客様の要望を直接聞けることも、野菜を直接買っていただいているおかげです。