農家とビニールハウス

田園地帯に行くとよく見かける構造物があります。ご存知の方も多いと思いますが、農業用ハウスです。
今回は農業用ハウスに関して書いてみます。

ビニールハウス外観

農業用ハウスの種類

農業用ハウスは構造と素材により分類できます。ガラスハウスとプラスチックハウスの2種類があります。
ガラスハウス:素材は鉄骨。屋根はガラスを利用。骨格がしっかりしており高価です。
プラスチックハウス:素材はパイプ。被覆資材にビニールなどプラスチックを(最近は農ポリが多い)を利用。ビニールハウスやパイプハウスとも呼ばれます。プラスチックハウスは比較的安価で(といっても1棟100万円は超えます)、専門業者にお願いすれば数日で建ちますので一般的に見かけるのはこちらです。

ちなみに、法律的(農地法)では、農業用ハウスは建物ではなく、農地として取り扱われます。農地として取り扱われることにより相続税や固定資産税で引き続き優遇されます。ただし 2018年の法律改正まではハウス内をコンクリート張りすると農地転用する必要(相続税の納税猶予がなくなったり、固定資産税の評価額が上がる)がありましたが、現在は軒高などの条件はありますが、コンクリート張りをしても農地転用する必要がなく農地とすることができるようになりました。

農業用ハウスの中

農家以外はこの中に入る機会はあまりないと思いますが、中で何が行われているかご存知ですか?
外から見ると、中がぼんやり見える程度なので、はっきりと何が行われているか分からないかもしれません。野菜が育てられていると想像されるかもしれません。
農林水産省の統計をみると、最も多い使い方は野菜を育てることです。次に花き、果樹と続きます。
施設園芸農家数推移

(出典:農林水産省 施設園芸をめぐる情勢 http://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/sisetsu/index.html)

実際にはそれ以外の使われ方もあります。
例えば、京都長尾ファームでは水稲の育苗用にハウスを利用しています。まだ寒い4月上旬から苗を育てますので、露地(外)ではなくハウスの中で育苗します。遅霜の恐れが低くなった5月ごろに播種した水稲苗は露地で育苗しても大丈夫です。水稲苗は霜に当たると葉先が枯れてしまいます。

また、農業用ハウスは利用する人の性格がよく出ます。畝の立て方、スペースの使い方などきれいに整理整頓されているハウスもあれば、雑然と資材を収納しているハウスもあります。

農業用ハウスの中を見る機会があればこのような観点で見てみると面白いかもしれません。

農業用ハウスの意味

農業用ハウスの目的は、一言でいえば環境を制御できることです。
元々は農業用ハウス内の気温を高く保つことが目的だったと思われますが、最近では資材・装置を駆使すれば、気温、湿度、CO2濃度、日射量などを目的に合わせて制御できます。

ではそれぞれの立場にとっての意味を考えていきます。

〇消費者にとっての農業用ハウス

食卓に上がる時期が広がります
本来栽培される季節以外でも食卓に上ります。例えば、ナスは夏の高温期に生育が旺盛になりますが、今では冬でもスーパーで販売されています、こればハウス内で暖房などを使って育てているからです。

化学農薬が低減できる可能性があります
ハウスには虫の侵入を防ぐことができる防虫ネットを張ることができます。完全には防ぐことは難しいですが、ある程度防ぐことにより使用する農薬も減らすことができる可能性が大きいです。
また、化学農薬を減らす方法として、生物農薬(天敵)を利用する方法があります。有名なところでは害虫のハダニを駆除するためにチリカブリダニをいう生物農薬が利用できます。開放系である露地で天敵を使うこともありますが、ハウスでの天敵の利用は進んでいます。

泥はねが少なく綺麗です
ハウスを使わない露地栽培では雨が降ると土が跳ね返り、野菜の株元に土がつきます。ハウス栽培は雨がかかりませんので土の跳ね返りを防ぐことができます。

〇農家にとっての農業用ハウス

収穫できる期間が広がります
農業用ハウス内は気温を高く保てるので、露地栽培は難しい季節でも野菜の栽培が可能です。

天候に左右されず作業ができます
雨の日でも雪の日でも風の日でも作業がつらくないです(暑い日は大変ですが)。冬の露地の作業は本当に辛いんです。。。

ICT、IOTが利用できます
最近話題の技術が利用できます。各種センサーの利用や機器との連携も可能です。露地栽培でもドローンやGPSなどの最新技術を利用した農業は利用できますが、農業用ハウス内のほうが利用技術の幅は広がります。

野菜の見た目がきれいです
下の写真は冬の間、露地で栽培した小松菜です。特に寒い時期に露地栽培すると、葉っぱがゴワッっとして固く、横に広がったような小松菜が出来てしまいます。そして、葉先も寒さで傷んでしまうことがあります。これが本来の小松菜の姿なのですが、スーパーで見かけるシュッとした小松菜とは違い見た目はあまり良くないです。でも露地栽培の小松菜も味は濃くて、煮たりすると美味しいですよ。ちなみに、妻はこれは「小松菜ぽいけどチンゲン菜の可能性もある」と思ったらしくスムージーの入れかどうか迷っていました。それぐらいスーパーで売っているシュッとした小松菜と異なります。

露地小松菜

〇環境にとっての農業用ハウス

エネルギー資源を効率的に利用できます
農業自体が環境に負荷をかけている部分があるのは確かですが、農業ハウス内の環境を制御できるのエネルギーを効率的に使える面があります。例えば太陽光を効率的に利用できますし、養液・水耕栽培では肥料分を循環させて無駄なく利用できますし、流亡による河川の汚染も抑えられます。

 

 

京都長尾ファームの取り組み

京都長尾ファームではこの冬の間に小さいですがパイプハウスを建てています。今まで露地のみで頑張っていましたが、どうしても冬場の寒くなった季節の野菜の供給が減って悩んでいました。これで少しは解消でき年間を通して安定的に野菜の供給ができると考えています。
皆様においしい野菜を年中お届けできるように頑張ります。

 

 

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